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大会レポート
<特別併催:文化プログラム ペア碁漫画展>
3月20・21日

 これまでにない特別併催イベントとして話題を集めたのが「ペア碁漫画展」だった。昭和生まれの女子なら誰でも必ずこの方の漫画を読んだことがあるだろう少女漫画界の大御所、里中満智子さん、世界中に熱狂的なファンの多い『AKIRA』の大友克洋さん、絶大な人気で様々な社会現象も起こした伝説の漫画『あしたのジョー』のちばてつやさんら、一線で活躍される漫画家20名が、それぞれ「ペア碁」をテーマに作品を創作。その作品群がパネルになり、セルリアンタワー東急ホテルの一室に一斉に展示された。渋谷に閉じ込めておくのがもったいないような企画だ。

 「ペア碁漫画展」は3月20日、21日に開催され、20日の一般公開12時に先立ち、10時半から関係者・プレス向けに開場された。出展された漫画家の皆さんも、当初の予定をはるかに超える方々が来場され、「今回、イラストが面白いと思ったわ」「表紙がついてる。面白~い」などなど感想を口にされながら展示を楽しまれていた。

ペア碁漫画展 会場

 「『ペア碁』は漫画にしやすい題材の競技。ペア碁と漫画はすごく相性がいいと思います。漫画の力がペア碁の普及の働きになれば」と語るのは、今回の企画の火付け役、一般社団法人横手市増田まんが美術財団の大石卓さん。「横手市増田まんが美術館」は、漫画家の原画保存の取り組みもしており、大石さんは美術館内の「マンガ原画アーカイブセンター」のセンター長でもある。「日本ペア碁協会名誉会長の滝さんには、日ごろから美術館がいろいろお世話になっており、いつか恩返しをしたいと思っていました。今回のワールドカップ開催にあたり、ペア碁と漫画をつなげるお手伝いをさせていただきました」と大石さん。里中満智子さんにお声をかけ、里中さんと共に漫画展までを構築されてきたという。

 里中さんが「『ペア碁』をテーマに、イラスト、2コマ、4コマ、ストーリーものといろいろ分けて、それぞれの漫画家さんの得意分野で自由に描いていただくということでお願いしました。普段の仕事とは違うニュアンスで皆さん描いてくださった。で、結果的にすごくバラエティーに富んだ作品展になって面白いなと思います」と話された通り、続きをぜひ読みたい!と想像がふくらむストーリーものから、おもわず吹き出してしまう4コマもの、1コマ(イラスト)作品には、ほのぼのさせられたり、画面からあふれんばかりのエネルギーに元気をもらえたり、逆に深遠な世界に引き込まれたり……見入ってしまう作品ばかりがズラリと並んでいる。内容的にも、心理戦のハラハラを描いたもの、恋愛の手練手管、家族愛、絆、孤独……と幅広い。「狭いテーマのように思うんですけれども、ポイントが、お互いに心が通じ合っているかどうか、で、心が通じ合ってるとして、その上で、まだ対局する相手がペアでいるわけですよ。だからその複雑な心理戦みたいなのが、1対1よりももっと際立ってくるので、それがよく表されている作品が多くて面白いなと思いました。テーマが一つであっても、これだけ広がっていろんな表現ができるんだってことで楽しんでいただければと思います」という里中さんの言葉にも大きく頷けた。

里中満智子さん

 記者団の取材に応える形で、「今みんなで盛り上がっていましたのは、コロナ禍で久しぶりに会ったからなんです。漫画家が一堂に会していると珍しいことみたいに思われるかもしれませんが、意外と珍しくないんです。こういうふうに一つの企画に対して皆で盛り上げようという時に、力を合わせて、一緒に何かやろうねということもよくありますので、その盛り合わせを楽しんでいただければなと思います」と里中さん。確かに、漫画家というと、家に籠もって黙々と描いているようなイメージを持っていたが、皆さんフットワークが軽く、常に世間にアンテナを張っていらっしゃるのだなぁと納得した。

 また、ペア碁の魅力について、里中さんはこんなふうに語られていた。「ペア碁というものを、よく知らない人のほうがほとんどだと思うんですけど、一対一でやるのと違って、味方同士の心がどれだけ通い合っているかということが問われる、ある意味恐ろしい(笑)勝負ですよね。だから、人と人との絆とか、わかり合ってるつもりでもズレがある。プレーヤーたちはそこも楽しみながらやっているのではないか、見る側もそこが面白いんじゃないかなあと思います」
 そして、ご自分がペア碁を題材にしたストーリーものを描くとしたら、「人の心と心……特にペアっていうのは、前提として信頼し合ってなきゃいけないんですが、そこがね、いろんなことがあってぐちゃぐちゃなるのが人と人との関わりなので。だから私が描くとしたら、恋愛中のカップルが勝負を通してだんだんこうすれ違っていくみたいなのが面白いかなとか思っています(笑)」とのこと。ぜひ読んでみたい! ご執筆をお願いいたします!

 記者の方からは、「ペア碁の会話禁止というルールが、漫画の世界になると文字で起こせる、心理を文字で起こせるというところが、今日拝見させていただいて、逆にワクワクするところで、先生方の表現性も、いろいろ幅が広がるのかなと思いました」という感想も聞かれた。これに応えて、里中さんは「そうですね、人の心の中はわかりませんので、わからないのに信頼し合って、わかり合ってるという前提でやらなければいけないという苦しみですよね。これはこのペア碁の勝負に限らず、日常のいろんな生活の中とか仕事関係でもいっぱいあることだと思うんですよ。だからそういういうのを凝縮させたドラマとして、ペア碁で描けるというのは、実はペア碁の形を借りながら、人間模様のいろんなことを語れる、そういう面白さはありますよね」と語られていた。ペア碁の可能性と新しい広がりを実感させられるお話だった。

 さて、漫画家の皆さんに、個別にもお話を伺ってみた。

 佐佐木あつしさんは、今回16ページのストーリーを書き下ろされたという。「囲碁は全く知らなくて、お話をいただいて、一から勉強しました。いやもう奥深い!」。実はこれまで「囲碁は、座ったままの競技なので、読者に何をどうやって伝えるか、演出が難しいと感じていた」と仰る。「でも今回、いろいろな方の作品も拝見し、勉強になりました」とのこと。佐々木さんの作品は、ギャラリーを多く集め、「面白いね!」という声が何人もから聞こえてきていた。

漫画家の皆さんで記念撮影

 山田ゴロさんは、別室での「プロ棋士ペア碁選手権2022」を観戦されてきたようで、「すごい緊張感ですよね。静かなのに」と、話されていた。今回の作品は、まさに「緊張」をユーモラスに描いた4コマ漫画。実際に対局の様子を観戦されて、また新たなアイデアが浮かばれたのではないかしらと勝手に想像し、新しい作品も描いていただきたいなぁと次の企画も期待してしまった。

 里中満智子さんは、「囲碁を打っているシーンを描くことはあるんですが、自分では全然やらないんですよ」とのこと。ただ、囲碁への興味は尽きないと仰り、造詣も深くていらっしゃった。「近年、けっこう古い時代の物語を描くことが多くて、日本でいうと奈良時代とか。あのころから、囲碁は盛んに打たれていて、正倉院に残された御物……すごく素晴らしい碁石とか碁盤があるんですよね。あのころ、どういう場で打たれていたのかというと、けっこう日常的に皆さん楽しんでらしたみたいで、対局の最中の喧嘩があったとかね、そういう話も残っている。囲碁が日常的にあったんだなあと思いながら、想像をふくらませています。東アジア地域でずっと残ってきたというのは、一種の戦いというよりも、皆さん知恵比べを楽しんでらしたんじゃないかなと思うんですよ。先を読むということも、生き延びていく上でもすごく大事なので、たしなみとしてだけではなくて、疑似体験としても真剣にやってらしたんじゃないかなと思います。そういうのを想像するのが楽しいですね」。こうしてほんの少しお話を伺っただけでも、囲碁の世界の新しい扉を開けていただいたような気持ちになった。

 もう一方、現在、「月刊アクション」(双葉社)に好評連載中の『群舞のペア碁』の著者、高木ユーナさんも来場されていた。今回の「welcome」の文字が描き込まれたイラストは、この漫画展のために書き下ろした作品だという。「welcomeは、もちろん、この『ペア碁ワールドカップ』にいらっしゃいませ、もあるし、皆さんよかったら囲碁を打ってみませんか、みたいな気持ちも込めました」と高木ユーナさん。かわいらしく、優しさにあふれる語り口だ。

 『群舞のペア碁』は、プロ棋士を目指しながら、極度のあがり症のため負けてばかりの主人公、臨群舞くんが、「ペア碁」に出会い、「ペア碁」を通して成長していく物語。臨群舞くんはもちろん、魅力的で濃いキャラクターが次々と登場して物語の展開から目が離せない。高木さんは「監修の藤沢里菜さんとかに、こういうキャラクターなんですというお話をすると、やはり皆さん『現実ではあり得ないよ』とビックリされるんですけど」と楽しそうに笑い、「でも、現実ではあり得ないくらいすごい能力を持った子たちが、漫画のキャラクターとしては立つかなぁというか…漫画だからこそ、現実離れしたキャラクターたちに話を進めていってもらえる」。そして「囲碁を全く知らない人たちにも、なんか変なキャラクターがいて面白いなって思ってもらえるように、一癖どころか、一人ずつに三癖くらい入れているんです」と話される。

 また、高木さんのお話からは、囲碁界や棋士への熱い思いも伝わってきた。「私、ペア碁を知って、勉強をして、棋士の方たちを知っていって、やっと棋士の方たちの魅力的なところを知れたのに、囲碁を知らない人たちは棋士の魅力に触れる入口にもまだ立っていないので、現実にはないキャラではあるんですけど興味を持っていただき、漫画から本当にいらっしゃる棋士の方たちを知ることにつながって、ファンになっていただければなと思っています。本当に、棋士の皆さんは個性的だし、棋風とご本人の性格がものすごくギャップのある方がいっぱいいらっしゃるし、とにかく男性も女性も、皆さんカッコイイですよね。なんか感動しちゃって」と高木さん。「三癖」も入れる、こだわりのキャラクターづくりには、こんな思いも込められていたのかと知り、こちらも感動した。

 キャラクターが立つように、そして、「囲碁を何も知らない人たちが興味を持ちやすい展開をつくりやすいかな」という思いも、囲碁より「ペア碁」を題材に選んだ理由だという。「勝手に構想だけはどんどん広がっているんですけど」と目を輝かせる高木さん。個性が超豊かな臨群舞くんとキャラクターたちが、これからも独創的に生き生きとペア碁の世界を広げていってくれそうでわくわくする。

 たった二日だけの「ペア碁漫画展」だったが、多くの人が来場し、一作一作に足を止めて見入っていた。「漫画展も楽しみました」とにこにこ顔の小林泉美七段や、「実は漫画展を見にきたんです」と笑う保坂繭三段らとも遭遇した。棋士たちにもとても気になる展覧会だったようだ。

 漫画の力は本当に大きい。大石卓さんのお言葉のように、今回の企画がペア碁の普及に働いてくれるきっかけになればなと期待に胸がふくらんだ。

里中満智子さん / 高木ユーナさん
ちばてつやさん / 大友克洋さん
木村直己さん / バロン吉元さん
佐佐木あつしさん / ねもと章子さん
ちゃんやつさん / 喜乃さくらさん
山田うさこさん / mizo_re2さん
倉田よしみさん / ちーにょさん
三浦みつるさん / いわみせいじさん
山田ゴロさん / 北川玲子さん
ひのもとめぐるさん / うえやまとちさん

特別協賛

東京メトロ
東急グループ
楽天カード

協賛

伊藤園
三井住友銀行
SMBC日興証券
トピー実業
NEC
大興電子通信
パンダネット
富士フイルムイメージングシステムズ
フジサワ・コーポレーション
アドグラフィックス
日本交通文化協会
NKB
NKB Y's

主催

日本ペア碁協会 / 世界ペア碁協会 / ペア碁ワールドカップ2022 ジャパン 大会実行委員会

ペア碁ワールドカップ2022ジャパンは、beyond2020プログラム認証事業です。
「 beyond2020 」とは2020年以降を見据え、日本の強みである地域性豊かで多様性に富んだ文化を活かし、成熟社会にふさわしい次世代に誇れるレガシーの創出に資する文化プログラムです。
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