プロ棋士ペア碁選手権2010年
プロ棋士ペア碁選手権2010年 プロ棋士ペア碁選手権2010年

 ふだんは真剣勝負に明け暮れるプロ棋士たちが、年に一度ワクワク楽しい気分を味わう大会である、「プロ棋士ペア碁選手権2010」が、12月5日(土)に東京・市ヶ谷の日本棋院東京本院で開催された。
 今回で16回目だが、毎年出場する常連から、久しぶりのベテラン、今年初めての緊張の若手など、成績抜群の棋士が勢ぞろいである。  今回から、A・Bブロックの2つでトーナメントを行い、2組の優勝ペアを決めることになった。来年3月に中国で行なわれる世界大会に、2組とも出場する。

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開会式を待つ控室では、二十五世本因坊治勲(趙治勲九段)と小林光一九段が、真ん中に陣取って盛り上げていた。二人が顔を合わせれば、いつも話は尽きない。

プロ棋士ペア碁選手権2010年
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加藤啓子六段と羽根直樹本因坊 前回優勝の加藤啓子六段と羽根直樹本因坊のペアは、ディフェンディングチャンピオンとして、今回もペアを組む。
加藤六段は、「昨年も一緒だったので、何となく分かってる気がするので。楽しく充実して打てればいいと思います」と余裕がある。
羽根本因坊も、「特に成績の目標はありませんが、楽しく充実して打てればいい。ペア碁は勝とうと思って勝てるものでもないので」といつもように自然体だった。

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大澤奈留美四段・井山裕太名人  久しぶりの片岡聡九段は、知念かおり四段とのペアである。相手の大澤奈留美四段・井山裕太名人と向かい合って、開始を待つ間に、「女性、女性が打ってから、男性、男性だよね」と打順を確認していた。「うっかり続けて打っちゃうとどうするんだっけ」と聞いて、大澤四段に、「コミ3目なんです」と教わって納得していた。
 大澤奈留美四段と井山裕太名人のペアは、新鮮な感じ。井山名人は最近凛々しくなって、少年のイメージから変わってきている。それも好印象だが、大澤がいつも爽やかで少女のような雰囲気のままなので、二人とも初々しさを感じさせる。


知念かおり四段・片岡聡九段 井山裕太名人・大澤奈留美四段
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 兆乾初段は初出場である。大先輩の依田紀基九段とのペアで、緊張するのも無理はない。しかも、1回戦の相手は、青木喜久代八段と二十五世本因坊治勲のペアである。初めからうつむいて打っていたのは、緊張したせいもあっただろうが、盤上に没頭するように自分に言い聞かせていたのだろう。


二十五世本因坊治勲・青木喜久代八段・依田紀基九段・兆乾初段 依田紀基九段・兆乾初段
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 加藤啓子六段は、さすがに余裕があるようで、立って飲み物のペットボトルを二本取ってきて、一つを羽根本因坊に渡す。


プロ棋士ペア碁選手権2010年
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< 開会式 >

滝裕子理事・事務局長  日本棋院3階のホールで、16ペアが1回戦の組み合わせに沿って、碁盤を挟んで着席。
 開会にあたって、財団法人日本ペア碁協会の滝裕子理事・事務局長があいさつに立ち、「来年3月には中国で世界大会を行ないます。今大会は2ブロックで行い、2組の優勝ペアが世界大会に出場します。ぜひ世界一を目指して頑張っていただきますように」と激励した。「代表には特訓プログラムを用意していますので、楽しんでいただきたいと思います」と話すと、出場棋士たちが楽しそうに沸いていた。
 大会審判長の大竹英雄名誉碁聖は、「ペア碁は楽しい大会ですね」と、対局者ではないのが残念そう。


滝裕子理事・事務局長 二十四世本因坊秀芳・小川誠子六段
大竹英雄名誉碁聖 司会・後藤美代子

 解説の二十四世本因坊秀芳(石田芳夫九段)と司会の小川誠子六段もプロペア碁には欠かせない存在である。二十四世本因坊のていねいな解説で、激しくなりやすいペア碁の戦いも、ファンに分かりやすく伝えられる。
ときどき難しくなると、小川六段が噛み砕くように説明して、ファンも納得である。
 司会の後藤美代子がルール説明。互先、先番6目半コミ出し、初手から30秒の秒読みで、途中1分の考慮時間が10回と説明。助言はもちろんご法度だが、手番の相談はよし。打順の間違いはコミ3目のペナルティである。そして、いよいよ1回戦の対局開始となった。


鈴木 歩四段・山田規三生九段 蘇耀国八段・奥田あや二段
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二十四世本因坊秀芳・小川誠子六段 対局が始まると、初手から30秒だから、「10秒…20秒」とあちこちで秒読みの声がする。序盤から、あわただしい雰囲気である。
 1階の解説会場では、二十四世本因坊秀芳と小川誠子六段が、注目の対局を解説していく。満席の盛況で、後ろの方の席では、立ち上がって解説盤を眺める人もいた。


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< 1回戦 >

石井茜初段・坂井秀至七段 奥田あや二段・蘇耀国八段

〈【白】石井茜初段・坂井秀至七段 対 奥田あや二段・蘇耀国八段【黒】〉
 石井茜初段と坂井秀至七段のペアは、初出場同士。坂井七段が、「二人の相性が、たぶんよかったんでしょう。行き当たりばったりでしたが、落ち着いて自分をコントロールできました」と言うように、呼吸を合わせて、スルスルと勝ち上がって行った。


石井茜初段・坂井秀至七段
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万波佳奈四段・小林覚九段 鈴木歩四段・山田規三生九段

〈【黒】万波佳奈四段・小林覚九段 対 鈴木歩四段・山田規三生九段【白】〉
 白が上辺でギクシャクして、解説会では、「黒よし。これは白負けますね」と言われていたが、ペア碁は形勢が揺れ動く。しばらくすると、「ちょっと前までは白非勢だったが、まだ分からなくなった」と形勢混沌。結局逆転して、白番の鈴木・山田ペアが勝利。


万波佳奈四段・小林覚九段・鈴木歩四段・山田規三生九段
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大澤奈留美四段・井山裕太名人 知念かおり四段・片岡聡九段

〈【黒】大澤奈留美四段・井山裕太名人 対 知念かおり四段・片岡聡九段【白】〉
 激しい攻防で、本因坊秀芳は、「さっきまでは黒がよかったが、今は白に乗りたくなった」と判定していた。ところが、結果は黒番の大澤・井山ペアの勝利。
知念かおり四段・片岡聡九段 玄関を出て行く片岡九段を見つけたので、追いかけたら灰皿のある喫煙スペースへ。「負けちゃったんですか?形勢よかったようですが」と聞くと、「そうなんだけど、死んじゃったんだよね」と言って方をすくめていた。「でも久しぶりで楽しかった」
 トーナメントだから、負けたら終わりだ。早く終わって手持ち無沙汰に見えたが、「早く負けたら、土曜だから予定もないわけじゃないので」と。種目を変えて、もうひと勝負するらしい。


大澤奈留美四段・井山裕太名人
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吉田美香八段・黄翊祖七段 向井千瑛三段・河野臨九段

〈【白】吉田美香八段・黄翊祖七段 対 向井千瑛三段・河野臨九段【黒】〉
 吉田美香八段・黄翊祖七段ペアが、一回戦を勝つとするすると決勝へ進出した。「吉田先生が強くて、ぼくは何も役に立っていないんです」と黄七段は頼り切っている様子だった。


吉田美香八段・黄翊祖七段
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兆乾初段・依田紀基九段 青木喜久代八段・二十五世本因坊治勲

〈【黒】兆乾初段・依田紀基九段 対 青木喜久代八段・二十五世本因坊治勲【白】〉
 石田九段が、「兆さんや石井さんは初段で出場ですが、この大会はランキングで出ているのですから偉いものです。実力者の矢代久美子五段が出ていないのが意外ですが」と話していた。石田九段が、趙九段の話をして、「前は相手の女流の悪手に怒ってた」と言うと、すかさず小川六段が、「私も石田先生と組んだときには怒られました」と突っ込む。「あんまり怒るんで、お客さんが先生に怒ってましたけど(笑)」と言われて、石田九段も形無しである。この碁は、兆・依田ペアが、自分の生きている石を死んでいると勘違い、手を抜いてほんとに取られてしまって大逆転だった。青木八段は、怒られずに済んだかも。


大盤解説会 兆乾初段・依田紀基九段・青木喜久代八段・二十五世本因坊治勲
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加藤啓子六段・羽根直樹本因坊 謝依旻女流本因坊・王銘エン九段

〈【黒】加藤啓子六段・羽根直樹本因坊 対 謝依旻女流本因坊・王銘エン九段【白】〉
 下辺で黒が薄く打って戦いに。黒がよくなって、「終わってから、銘エンさん怒られるな(笑)」と石田九段。
謝依旻女流本因坊・王銘エン九段  この碁が1回戦で最後まで残った対局で、終盤は王のボヤキがすごかった。「バカ、頭がおかしい」「もう分かんないなあ、悔しいなあ」「なんだこれは!」といつもの一人の対局と変わらない。
 敗戦の後の感想戦では、王九段が自分の手のことを、「このハネひどかったな」と言って、謝に向かって、「悪いね」と呟く。「いえ」と謝が首を振る。王のぼやきは続いたが、「楽観してた。あっ、お疲れのところ。次の碁もあるから、どうぞ休んでください」と加藤・羽根ペアに気を使って、検討を終わりにした。


加藤啓子六段・羽根直樹本因坊・謝依旻女流本因坊・王銘エン九段
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梅沢由香里女流棋聖・高尾紳路九段 小山栄美六段・小林光一九段

〈【白】梅沢由香里女流棋聖・高尾紳路九段 対 小山栄美六段・小林光一九段【黒】〉
 小山栄美六段は小林光一九段とペアを組んだ。大先生相手だが、「光一先生も丸くなりましたから」と言ったら、「お互いにね」と笑っていた。残念ながら1回戦で敗退して、小林九段に、「二人の呼吸はどうでしたか」と聞くと、「うーん、負けちゃったからねえ。なかなか難しいんだよね。打ってみてどうなるか、出たとこ勝負だったんだ」と言って引き上げていった。


梅沢由香里女流棋聖・高尾紳路九段 小山栄美六段・小林光一九段
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桑原陽子五段・結城聡九段 井澤秋乃四段・山下敬吾棋聖

〈【白】桑原陽子五段・結城聡九段 対 井澤秋乃四段・山下敬吾棋聖【黒】〉
 丸刈りの結城九段は、真剣そのもの。ふだんはのんびりした印象なのに、対局になると鋭い顔つきになって怖いくらい。おっと、となりの桑原六段も厳しい顔つきになってる。さっきまで、あんなにニコニコしてたのに、やっぱり棋士は勝負師なんだなあって思う。
 敗れた井澤・山下ペアの話。山下が、「ぼくが結城さんを怒らせる手を打って、そのあとうまく打てればいいはずだったのですが、ぼくが悪い手を打ってだめにしてしまいました」と言うと、井澤が、「すみません、迷惑かけて。私がひどい手を打って結城さんを怒らせて、山下さんを困らせた(笑)」とフォロー(?)していた。
 山下は、「ペア碁は、いつもと違った雰囲気でいいですね」と負けても気分は悪くなさそうだった。


桑原陽子五段・結城聡九段・井澤秋乃四段・山下敬吾棋聖・二十五世本因坊治勲
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