| 先週は16ペア32人のトップ棋士でひしめいていた控え室も、今日はやや閑散とした印象。しかし、賑やかさがなりを潜めた分、棋士の勝負魂はヒートアップしている様子だった。ペア同士、熱心に作戦を練ったり、小声で囁き合ったり。 | 
| 吉田・小林ペアは何やら吉田七段が熱弁を振るっている。隣で小林碁聖が扇子を片手に大きく頷く。 | 
| 「それやから、先生、こうこう、こうなんです」 | 
| どうも、吉田七段が仲良しで昔はペアを組んだこともある結城九段の特徴を説明しているらしい。 | 
| 「なるほどね。よし、じゃ、この作戦でいこう!」 | 
| と小林碁聖。どうやら作戦が決まったらしい。 | 
![]()  | 
| 一方の結城九段は、二人にしっかり傾向と対策を練られているのも知らない様子。 | 
| 「背広は持ってきたけど、ワイシャツ忘れてしまった!」 | 
| と慌てて隣のデパートまで買いに走っていった。 | 
  | 
  | 
| 「先生、今日もよろしくお願いしますね。優しくしてくれないと私泣きますよ」 | 
| と、念押しするのは梅沢五段。 | 
| 翌々日には女流最強戦の決勝を打つ身。今年、最も飛躍した女流棋士の一人かもしれない。 | 
| お相手の石田九段はペアの女性に厳しいことで悪名高くなってしまった。皆に責められて今年はすっかり改心したらしい。そのせいか、今年は見事、一、二回戦を突破した。 | 
  | 
  | 
| この日も、 | 
| 「大丈夫、楽しく打つ。それが一番」 | 
| と語って、半ば自分に言い聞かせる様子。 | 
| 「星にする?それとも小目?」 | 
| と問い掛けるのは武宮九段。小林女流本因坊が人差し指を口元にあてて、「うーん」。 | 
![]()  | 
| しばらくして、コソリと何やら呟く。 棋風の違いを心配された両者だが、意外なことに息がぴったり。先週の結果から、「優勝候補」の呼び声も高い。 | 
| 「僕、くっついて行くだけ」 | 
| というのは、王棋聖。 | 
| 「難しいところは全部、先生が考えてくれるから」 | 
| と、大船に乗った様子の小西七段。棋風から「ペア碁向きではない」と言われる王棋聖だが、今年は何だかいけそうな雰囲気である。 | 
  | 
  | 
| 加藤本因坊と小山五段は、 | 
| 「今さらジタバタしなくても、師弟の仲だから大丈夫」 | 
| と、余裕たっぷり。 | 
![]()  | 
| 小川・依田ペアは棋譜を見ながら検討している。こちらも落ち着いた様子だった。 | 
  | 
  | 
  | 
| 王座戦が終わったばかりの二十五世本因坊治勲は一人、窓の外を見て深いため息。誰も話し掛けられないでいたが、小林碁聖が「お疲れ様でした」。それをきっかけに、祷五段が挨拶。 | 
| 「普通に打っていれば僕たち楽勝だから」 | 
| と二十五世。祷五段がコロコロと楽しそうな笑い声をあげる。優勝候補の筆頭ペアである。 | 
![]()  | 
  |