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大会アルバム<観戦レポート 2>

本戦1回戦 崔精九段・朴廷桓九段ペア(黒)VS 謝依旻六段・高尾紳路九段ペア(白) 8月20日(月)

 
図1(1~51手)

 序盤、黒が上辺、下辺と足早に地をかせぐ。「布石から順調にいった」というのが終局後の朴の第一声。大盤解説をしていた趙治勲名誉名人や石田芳夫二十四世本因坊も「右上白50など、白は堅く打ちすぎている」という評価で一致。白50では51に押す方が自然だったようだ。黒51とマゲられて左右の白が薄くなり、早くも黒のペース。

図2(51~115手)

 解説者を驚かせたのが崔の打った左上黒61のケイマ。「普通は左辺に取り残された黒35を逃げる手を考える」(石田)が、それを放置して上辺の黒地を盛り上げてきた。「すごい」と趙。終局後、解説会に姿を見せた崔が「打ちすぎだった」と修正したのは、白62からの反撃が厳しかったためだが、白もなかなか攻め切れない。

 黒63ツケが常用の手筋。高尾は「白65とハサミツケる手も考えた」そうだが、読み切れずに断念。一方の黒は69~73と徐々にシノギ形に。そして決め手は朴の打った黒79で、高尾も感心した好手だった。「この手が見えていたら早めに白a、黒bを決め、白cを狙うような展開に持ち込めたが、見えていなかったのでどうしようもない」と高尾。

 白の勢力圏だった左辺で黒が地を持って治まり、その代償が右上の黒3子では引き合わない。「(左辺を攻められて)一時難しくなったが、相手の攻めがぬるかったので勝てた」と朴。黒の完勝譜となった。

謝依旻六段・高尾紳路九段ペア VS 崔精九段・朴廷桓九段ペア

 

本戦1回戦 藤沢里菜四段・一力遼八段ペア(黒)VS 楊子萱二段・王元均八段ペア(白) 8月20日(月)

 
図1(1~45手)

 日本勢として絶対落とせない戦いと見られていた一戦。「序盤、悪い手が出て」(藤沢)観衆をはらはらさせたというのは、黒29と右上2子を抜いた辺りのことだ。手数がかかった割にはたいしたことないという意味で、大盤解説会でも評判が悪かった。

 しかし、白24、30と迫られて風前の灯となっていた黒11の1子が、黒45まで簡単に生きて盛り返す。この辺り、中華台北のペアに誤算があったようだ。

図2(45~137手)

 さらに「中盤以降はペアの息があってきた」と一力。下辺の攻防では黒49以下、巧みに右下の黒を捨てて厚みを築き、黒63からは逆に左下からの白の一団を攻め立てる展開に。このあと主導権を手放すことなく、押し切った。

藤沢里菜四段・一力遼八段ペア VS 楊子萱二段・王元均八段ペア

 

本戦1回戦 加藤啓子六段・井山裕太九段ペア(黒)VS 呉侑珍六段・申眞諝九段ペア(白) 8月20日(月)

 
図1(1~91手)

 プロ棋士ペア碁選手権で優勝した加藤・井山ペアは、ともに韓国の若手強豪である呉・申ペアとの戦い。当然のようにAI流の黒9三々入りから競り合いが始まった。

 最初の問題手とされたのが呉の打った左辺白66の押さえ。白89のツケで様子を聞くべきところで、黒aのノビと換われば白の楽な展開になっていた。実戦は白70のハサミツケから生きたが、白76までつらい生きで、ここで黒がペースを握る。さらに中央白88のハネが無理筋で、白91とノビるのが本手だった。打った申は勝負手のつもりだったのかもしれないが、「少しヤケクソ気味」と解説会の石田二十四世本因坊。

図2(91~131手)

 さらに白100から102といった辺りも「ムチャクチャ」(石田)。白が無理を重ねる中で、「黒は右辺の一団をシノげば負けない」(同)展開に持ち込んだ。そして白114からの攻めに対し、黒115から117がうまい返し技で、この辺り、井山、加藤のコンビネーションも見事だった。黒131まで振り替わりだが、「手ごたえを感じた」と井山。

 黒がはっきり優勢となったが、この後のヨセで黒が損を重ねる。左下隅などで「音を立てて損している」と石田。打っている加藤自身も「形勢判断がまったくできていなかった」が、それでも黒の優位は動かなかったようで、ほとんどヨセを打ち終わった状況で韓国ペアが投了した。「ペアとしての準備が足りなかった」と言う呉、申に対し、井山は「申さんはなかなか一人では勝てない相手。加藤さんサマサマです」と言って、上機嫌だった。

加藤啓子六段・井山裕太九段ペア VS 呉侑珍六段・申眞諝九段ペア

 

本戦1回戦 芮廼偉九段・陳耀燁九段ペア(黒)VS 黒嘉嘉七段・林君諺七段ペア(白) 8月20日(月)

 
図1(1~64手)

 序盤、左下で白26、28から激しく攻めかかる。黒43、45と中央にアタマを出して一段落。白46と上辺の消しに回ったのを見て、黒47と厳しく下辺の白を割っていったが、白48の反発から白52、54と3子を食いちぎっては「白がいいと思った」と中華台北の黒。下辺中央の白の一団も白64までシノギに問題はない。陳が局後、「AIの判定によれば90%以上、黒の負け」と言っていたのはこの辺りの形勢判断だろう。

図2(64~147手)

 劣勢とみた中国ペアは黒69から上辺の白に激しく攻めかかる。白72以下、難解な攻防が続いたが、結局は右上の白の大石を仕留めて黒の勝ち。左下からの黒の大石に眼形が乏しく、さらに難しい攻め合いも絡んでいたが、「秒読みになってから混乱してしまった」と中華台北の黒。芮は「自分は悪い手ばかりだったが、パートナーの陳さんが冷静に相手のミスをとがめて勝つことができた」と締めくくった。

黒嘉嘉七段・林君諺七段ペア VS 芮廼偉九段・陳耀燁九段ペア

 

本戦準決勝戦 藤沢・一力ペア(黒)VS 崔・朴ペア(白) 8月20日(月)

 
図1(1~68手)

 序盤、左下黒11の両ガカリに対し白16の切りから18とカカエるのはAI流。右上黒21のツケは「相手に地を与えて疑問だった」という藤沢の反省がある。黒43のシチョウアタリが黒の楽しみだったが、白46~50とすっぽかされ、黒47、49と連打したものの、黒が今一つだったらしい。

 一力の打った上辺黒51のツケも、やや苦し紛れの手で、黒67まで上辺を割った代わりに黒5子を捕獲され、この辺り白ペースの展開。

図2(68~144手)

 黒77と下辺の1子に襲いかかり、白がどうサバくかという場面。崔の打った白86など白に疑問手もあったようで、白98まで虎口は脱したものの、黒97まで、一応、黒が寄り付いた格好。

 黒133のアテから下辺の白の一団の生死がかかったコウが発生したが、白136から中央で黒の模様を消しながら眼形づくり。この辺り、韓国ペアが息の合った巧みな石運びで主導権を渡さない。「黒133ではコウにせず、黒140と下辺の白の生きを催促してから左上隅に手を付ける方法もあったかもしれない」と一力。

図3(144~184手)

 結局は白184と生きて地合い大差となったが、この辺り白にも細かいミスがあり、黒にもチャンスがあったらしい。例えば黒181と平凡に押さえた手では、コウダテ作りのために左上白aの切りを打ってから、黒181と押さえ、白182、黒184から強引にコウに持ち込む手段があったようで、これなら黒が勝ちだった。朴は「最後、向こうにちゃんと打たれたら負けていた」と語り、藤沢は「最後のチャンスを自分のせいで不意にしてしまった。部分でなく、もう少し遠くを見ていないと……。頭の柔らかさが足りない」と反省しきりだった。

藤沢・一力ペア VS 崔・朴ペア

 

本戦準決勝戦 芮・陳ペア(黒)VS 加藤・井山ペア(白) 8月20日(月)

 
図1(1~90手)

 1回戦で敗れた謝依旻六段、高尾紳路九段が登場し、大盤解説会は、がぜんにぎやかになった。「仕事が終わったと思ってお酒を飲んでいたら、呼び出されちゃって……」と高尾。「負けた人は罰として解説をする決まり」と石田芳夫二十四世本因坊がやり返し、会場は笑いに包まれる。

 左上黒45、47のツケノビに白48と動き出していきなり競り合いに。芮の打った黒61のツケから互いに切り結んで激しい戦いに突入するが、中央白90と出ては「白の流れ」と高尾。

図2(90~137手)

 難しい競り合いが続く中、芮にビックリするようなミスが出る。中央、黒117の押しだ。白122と押されて3子は取られており、完全な持ち込みだ。解説会でも手順を確認しながら解説者に笑みがこぼれる。

 しかし、続いて陳の放った黒123のハネ出しが厳しい1手。白の対応もまずかったようで、黒137まで左上の白4子をもぎ取られては、黒が流れを引き戻した。

「私が打った石がそのまま取られて、陳さんもあきれたと思うけど、キレることなく打って挽回してくれた。陳さんのおかげ」と芮。一方の井山は「黒117を見た瞬間はラッキーと思ったが、黒123が厳しかった。芮さんに盛り上げていただいて、陳さんに突き落とされた。喜んでいた分、ダメージが大きかった」と振り返る。

図3(137~202手)

 その後は一進一退の攻防が続いたが、最後はわずか半目差で黒の勝ち。細かいミスが目立ったのは白の方で、下辺、黒157のカケツギに白158のカカエで応じた手がその一つ。白159とノビていれば実利がだいぶ違っていた。黒158と逃げ出しても白aでぎりぎり取れている。また、終盤、白198では199の押さえが大きかった。加藤は「ヨセでぬるい手を打ったのが悔やまれる。日本勢が消えてしまい、すみません」としょげていたが、井山は「個人的には楽しく打てた」と、さばさばした表情だった。

芮・陳ペア VS 加藤・井山ペア

 

主催

日本ペア碁協会 / 世界ペア碁協会 / 世界ペア碁最強位戦 2018 大会実行委員会

共催

日本棋院

特別協賛

ぐるなび / 東急グループ / 三井住友銀行 / SMBC日興証券

協賛

伊藤園 / パンダネット / トピー実業 / ANA / NEC / 山崎製パン / 凸版印刷 / パーソルホールディングス / 富士フイルムイメージングシステムズ / フジサワ・コーポレーション / アドグラフィックス / 大興電子通信 / NKB / NKB Y's / 日本交通文化協会

特別協力

東京急行電鉄