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プロ棋士ペア碁選手権2017

2017年2月12日(日) 2回戦~懇親会

【第二回戦】

 さて、昼食休憩の間に、会場は二回戦仕様に整えられた。4局分のスペースは片付けられ、代わりに、4局を同時にモニター画面で観戦できる椅子席が並べられると、こちらも、瞬く間に満席状態に。対局開始を待つ空気がたちこめてきた。

トーナメント表と二回戦組み合わせはこちら。
 選手一同は、席につくと、対局モードに切り替わった。一回戦より気合いが増しているようにも感じられた。

 大盤解説会場は、二回戦以降は、さらに盛り上がった。というのも、一回戦で敗退した棋士が飛び入りで大盤解説に加わってくれるためだ。井山裕太六冠、村川大介八段が現われると、会場のファンは大喝采で迎えていた。井山六冠は「ペア碁では、一回戦で負けることが多いです。だから、負けるのは僕のせいだと思っています」と語っていた。

 二回戦は混戦が多い中、ややワンサイドゲームとなった対局もあった。一回戦で大石を仕留めた向井千瑛五段・結城聡九段ペアと万波奈穂三段・山下敬吾九段ペアの対戦だ。もちろん戦いの碁になるのだろうと思いきや、戦いが始まらない。向井五段は「はじめにものすごく大きく地を取られてしまって」と振り返る。その後の展開を結城九段の言葉でお伝えすると「のんびり打ってチャンスを待っていたら、チャンスがこなかった」そうだ。敗れて、「もっと厳しくいくべきだった」と反省するお二人。結城九段いわく「妙に、変な風に向井さんと息が合って、遠慮し合ってしまった」のだそうだ。
 快勝した万波奈穂三段は、「山下先生にご迷惑をかけるのでは、と心配していたのですが、意外にうまく打てました」とにこにこ顔。山下九段は「僕がひどい手を打ってしまったのですが、それにもめげずに打っていただきました」とパートナーを立てるコメントだった。

 桑原陽子六段・蘇耀国九段ペアと藤沢里菜女流本因坊・羽根直樹九段ペアの対戦は「風変わりな布石」(石田二十四世本因坊)から一手一手慎重な石運び。中盤までは「いい勝負」(石田)だったのだが、藤沢・羽根ペアが制した。羽根九段は「里菜ちゃんが落ち着いていて、全く乱れないので、打っていて何回も感心させられました。安心して打てました」と満足の表情だった。

 石井茜三段・高尾紳路名人ペアは、奥田あや三段・山城宏九段ペアに惜敗。石井三段に振り返っていただくと「徐々に難しい形勢になって…最後は攻め合いになりました。取りにいけば一手勝ってたらしいのですが読めなくて。生きに行ったのが敗着になってしまいました」とのこと。高尾名人は「一回も勝てないかと思っていましたので、一回勝てて満足です。いい思い出ができました……思い出というのも大げさですが」と笑顔で振り返っていた。

 そしてもう一局、鈴木歩七段・趙治勲名誉名人ペアは、小西・伊田ペアから、冷や汗をかきながらの勝ち星だった。石田二十四世本因坊は、積極的な小西八段の打ちぶりを見て「お。小西さんは燃えてますね。ただ、打ち過ぎになる可能性もあります」。その予言があたり、逆に相手ペアにペースを与えてしまったようだ。伊田八段は「ただ、相手がコウ立てを間違えて、その一瞬、難しくなったかなと思ったのですが……形勢は届いていませんでした。攻めが空振りになって薄くしてしまい、チームとして目指している碁形になりませんでした」と冷静に分析してくれた。
 「間違え」は鈴木七段が打ってしまったよう。局後、控室では趙名誉名人が「あれでも負けてなかったんだね」と声をかけ、鈴木も「はい。負けにしたかと思いました」と二人でホッとした様子で語り合っていた。

【準決勝戦】

万波奈穂三段・山下敬吾九段ペア vs 藤沢里菜女流本因坊・羽根直樹九段ペア
鈴木歩七段・趙治勲名誉名人ペア vs 奥田あや三段・山城宏九段ペア
というカードになった。
 対局開始直前の8名の顔を見渡すと……山城九段と趙名誉名人が緊張した面持ち。かなり本気モードと見受けられた。



 大盤解説会場には、今度は高尾名人、結城九段、謝女流四冠が登場。まずは、二回戦の敗戦を結城九段が「山下さんが強いことはわかっていましたが、万波さんが…(会場からは早くも笑い)、意外といい手しか打ってこない(会場、爆笑)」と振り返り、続いて「羽根さんと藤沢さんは、二人とも、僕の印象では、取るものをとって、しのぎきる『あつかましい碁』」と紹介すると、会場は一気に盛り上がった。
 この、万波三段・山下九段ペアと藤沢女流本因坊・羽根九段ペアの一戦は、藤沢・羽根ペアが下辺の攻防で一本とると、そのまま流れを手放さずにゴール。敗れはしたものの、万波三段は「今日は三局も打てて楽しかったです!」と満開の笑顔だった。

 鈴木七段・趙名誉名人ペアと奥田三段・山城九段ペアの一戦は大盤解説のダイジェストでお伝えしよう。
高尾名人「この碁の布石のテーマは大ゲイマです」
謝女流四冠「テーマは決めた方が?」
高尾「僕はそんなことやったことない」(会場、大爆笑)
 その後、下辺で競り合う展開となり、白番の鈴木・趙ペアの二つの石が弱くなってくると…
高尾「凡人は白が危ないと思う」
謝「はい。白石が二つとも危ないですよね」
高尾「でも、治勲先生は、黒が危ないと思ってます」(会場、大爆笑)
 そして、局面が進むと…
石田二十四世本因坊「あらゆる黒の石が死にそうだ」
高尾名人の予言が的中し、白番の鈴木・趙ペアが黒石を仕留めて中押し勝ちとなった。
山城九段は「白には、まあ(小さく)生きてもらえばいいかと思っていたら、いつの間にかこんなことに」と敗北宣言。「でも、楽しみました。できれば勝ちたかったけど(笑)」と一日を振り返っていた。

【閉会式】

 閉会式では、決勝に残った2ペア・4名の棋士が改めて紹介され、会場からは大きな拍手が贈られた。4名は、それぞれこの日の感想と決勝戦への抱負をファンに伝えた。そして、その後の楽しい会話もお伝えしよう。

藤沢女流本因坊「苦しい碁もありましたが、羽根先生に優しく支えていただいて、楽しく決勝戦までくることができました。決勝の相手は強そうですが(会場、笑)、優勝目指して精一杯がんばりたいです」
羽根九段「皆さん、棋譜を見て、いい手だなと思われた手は全部里菜ちゃんの手です。なんかちょっと消極的だなと思ったら、それは全部私の手です」と会場を沸かせ、決勝戦に向けて「僕たちのペアは、いい感じだと思います。決勝戦は、僕次第ですね。薄い碁にならないように、手厚く打っていきたいと思います。がんばりたいと思います」
鈴木七段「今日は3局打たせていただいて、全部が序盤からシノギの展開になってしまって(会場、笑)、あ、これはツブレたかなぁと、3局で何回思ったかわからないのですけど、皆さんもちろんご存じと思いますが、趙先生の神がかり的なシノギに何度も何度も救われてここまでこれました。本当に、ワクワクするような手をいっぱい打ってくださるので、決勝戦も楽しみながら打ちたいと思います」
趙名誉名人「今回で23回目ですね。最初のころはね、女流棋士を攻めるんです。でも18回目ぐらいからね。男性棋士を攻めてくるんです。で、今度の決勝は、僕と羽根さんとの戦いなんです。いかに二人が間違えないでちゃんとやれるか。二人の女流棋士の邪魔をしないように、羽根さん、二人でがんばろうね!」
羽根「はい。僕なんて今日、時間つなぎ打ってしまいました」
趙「僕なんて、全部だもの、時間つなぎ。僕が時間つなぎを打つでしょ、そうすると歩ちゃんが、よしよしそれでいいんだって」
羽根「こちらも、そんな感じです」

 閉会式に続いては、お楽しみ抽選会も行われ、この日のペアのサインが入った9路盤などが来場したファンに贈られた。長い一日だったが、夢のようにあっという間に過ぎていった一日。来年もこの日が来るのが待ち遠しい。でももちろん、その前に大一番が待っている。
 楽しみな決勝戦は、3月5日に日本棋院にて、やはり公開対局の形で行われる。



 この日は、出場棋士の皆さんと、主催者・関係者との懇談会も行われ、大会会長の公益財団法人日本ペア碁協会の松田昌士理事長の挨拶、審判長の大竹英雄名誉碁聖の乾杯ご発声の後、大会を振り返って和やかなひとときを過ごした。石田二十四世本因坊の「総評」や小川誠子六段のインタビューや、趙名誉名人のおしゃべりで、こちらの会も大いに賑わったが、何より、日本ペア碁協会の滝裕子常務理事より、サプライズ報告があったことをお伝えしておきたい。2020年のオリンピック年に向けて勢いを増していくために、今年から毎年ペア碁の世界大会を開催していきたいとのこと。今年は8月中旬、日本、中国、韓国、中華台北からプロのペアを招いての大会を、渋谷で開催する予定だという。

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